NHKスペシャル『終(つい)の住処(すみか)はどこに』要旨・感想
NHKスペシャル終(つい)の住処(すみか)はどこに
老人漂流社会
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2013/0120/index.html
番組は走る医師の姿から始まる。
路上で高齢者が倒れたのだ。
行くさきのない高齢者が急増している、という。
今、特別養護老人ホームの数が足りない。
運送業をしていた男性。ずっと妻と自立して生きてきた。
妻が亡くなり、ある夏暮らしてきた都営住宅で熱中症で倒れた。一人では歩けなくなった。
年金は6万5千円。
特養なら十分やっていけるが、その特養が足りない。空きがでるまで3年という。そのため、いろいろな区の施設のショートステイを繰り返している。期間は1ヶ月。なじんたと思ったら移動しなければならない。荷物は身の回りのわずかなもの。多くは自宅の都営住宅においたままだ。
やっと長期間滞在できる民間施設が見つかった。しかし費用は14万。年金は6万5千円。蓄えも、医療施設や滞在施設を転々としているうちにわずか14万になってしまった。
そのため自治体担当者は生活保護を勧めた。差額の7万5千円を生活保護でまかなう。
新たな住処で生活保護を受けたら、家賃が別に発生する都営住宅は引き払わなくてはならない。持ち込めるのは身の回りのわずかな荷物だけ。
きれいに保管していた衣服などが無造作にビニール袋に捨てられていく。合板と思われるタンスは、リサイクルの方が費用がかかるのか、処分が簡単になるようその場で足で割られていた。
夫婦の数十年の暮らしが数十分でなくなっていく光景。
墓に入れずに(入れられずに?)部屋で保管していた妻の遺骨と写真を担当者が男性に持たせる。「・・・ありがとうございます」。男性が涙を流す。
移動の日、施設をでる。「元気でね」「大切にしてあげてね」「手さわってあげて。あら冷たい手・・」
多くの人に大切にされてきた。がそれでも出なければならない。
新しい施設に入ってまずすることはなんと終末期の意思の確認だ。倒れたときに延命措置を希望するかどうか。
おそらくは少しでも財政を節約しようという国の意図。
「命ある限りのばしてほしいね」
若い人間は延命措置はイヤだという人も多い。
生きているだけの惨めな生はいやだと。
が男性は延命措置を望んだ。
生に対する考えの違いでもあろうが、この映像を見ていると、さすがに「望まない」とはいえないだろうと思う。下手に言ったら捨てられてしまいそうな危うさを感じる。
水道工事を生業としていた男性。
持ち家もあり息子と暮らしていたが息子が脳梗塞で倒れ自分の医療費もかさみ、家を売却、野宿者用の施設にきた。個室があり食事もでるが介護サービスなどはない。認知症などひどくなったらでなければならない。費用は14万3千3百円。年金のほとんど。
男性は施設の職員に妻の墓参りを望んだ。以前は月命日ごとにきていた。動けなくなったらこられなくなるので。すっかり曲がった背中でバンに乗り込む。小さな墓に、おぼつかない足で上り、新たな施設で生きていくことを妻に報告する。
駐車場になってしまったかつての自分の家を訪れ、見つめる男性。
不況ではなかなか高くは売れなかっただろう。その上急な病気ではいい条件で売ることはできない。
国は特別養護老人ホームを急ピッチで建設しているがまだまだ足りない。
識者は、定収入の高齢者のための施設確保が急務だという。
また高齢者自身の参加により運営している民間施設もある。認知症の高齢者もいるが、料理などできることをしている高齢者もいる。できるうちは運営に参加し、倒れたら甘えて身の回りの世話をしてもらう。それでまわしていく。費用は14万。これが最低ラインなのだろう。
*
急速な高齢化、足りない施設。番組では言及されなかったがスタッフも足りない。民間施設では、腰痛などの職業病や低収入で、もっとも転職が多く常に足りない業種の一つだ。
野宿者用の施設に入った男性は墓参りの数日後吐いたものが詰まって倒れ、救急搬送、病院で亡くなった。
意外なことに葬儀には多くの家族親戚がきていた。
息子は脳梗塞で倒れた後半身麻痺が残った。一人で死なせて申し訳ない、と泣いていた。
家族はいる。が、自身も結婚がままならなかったり病気などで倒れたりで、高齢者を支えられないようになってきているのだ。
家族、という単位の機能が、経済不況などで急速に低下していると痛感させる映像。家庭で高齢者を支えるのは無理な時代になっている。
が、「家族」に変わるべきシステムを提供する「国」もまた不況で疲弊している。
高齢者だけではない。増え続ける貧困もまだ解決されてはいない。
生活保護は最大規模に膨れ上がり、若年層の受給者も多いが、雇用は改善しない。
財政は本当に切迫しているらしい。「派遣村」元村長湯浅氏が民主党政権に参加し、「ほんとうに(財政)ないんだなー・・・」と言っていた。
前野田政権は「待ったなしの財政改革」と言っていた。どの政権がやっても避けて通れないと。
が原発デモなどで「気分」で押し流されてしまった。
番組では年金がかろうじてある人人を映し出していたが、無年金の高齢者も多い。その多くが生活保護に依存している。生活保護は高齢者救済のたった一つの手段になっているのが現状だ。そこで民主は年金改革を行い、さかのぼって年金を支払えるようにし、将来の無年金者を減らそうとした。母子加算の復活などによっても、救われてきた人は多かった。
自公政権が復活。
以前のようにあからさまな新自由主義政策はとれないが、どこが政権をとっても財政不足は避けては通れない。
その上阿倍政権は公共事業による景気刺激を行うという。どこからか財政をとってこないとその政策は成り立たない。
政策次第によって弱者は一気にしわ寄せを受ける。
どの政権であろうと、避けては通れない壁。貧困と高齢化。そして復興、原発事故政策。
貧困撲滅を目指した民主、景気回復を公共事業とインフレターゲットでねじ伏せようと言う自民。
どの政策がヒットするか。誰がやっても難しい貧困の時代。
麻生副総理は地方公務員の給与カットを計画しているようだが公務員改革は劇薬なので慎重にやらないと社会がまた傾く…